文部科学省 令和5年度人文?社会科学系ネットワーク型大学院構築事業
文部科学省人文?社会科学系ネットワーク型大学院構築事業における審査の結果、代表校神戸大学、連携校小樽商科大学と和歌山大学にて申請した「地域/社会課題を解決する対話型ビジネス価値共創人材養成のための価値創発から社会実装までの一貫教育プログラム」が採択され、同プログラムを2024年4月より開始します。
本プログラムは、様々な利害関係者との創造的な対話を通じて、地域や社会における課題の解決に貢献できる対話型ビジネス価値共創人材の養成を目的とするプログラムであり、人社系大学院におけるキャリアパスの開拓が課題となっている中、養成する人材像が明確であること、また、企業や自治体との緊密な連携のもと、創造的かつ実践的な教育を提供する取組となっていること、カリキュラムや開設する科目など具体的なプログラム内容がよく練られ、実施体制や評価体制が整えられていることを、高く評価されました。
代表校である神戸大学では、経営学研究科を中心に、産業界へ高度経営人材を送り出すための取組を以前から行っており、本プログラムもその一環として位置づけられています。既に企業や自治体等との連携の実績もあり、大学自体による財政的な支援や企業等からの研究教育への理解と協力により、プログラムの継続性、発展性も期待されています。
また、本プログラムが、新規事業化に強みを持つ小樽商科大学、地域課題解決に強みを持つ和歌山大学と連携し、それぞれの強みを生かすことにより、ビジネスの広い領域をカバーし、多様な人材の養成が可能なものとなっていることも高く評価されました。
プログラム概要
本プログラムは、価値共創の手法として創造的対話を用いて、様々な利害関係者と協力して地域や社会における課題を解決できる対話型ビジネス価値共創人材の養成を目的としています。課題解決のためのアイデアや価値の創発から社会実装までを対象とした一貫教育プログラムを構築し、実際の地域/社会の課題を見出し、それをビジネスの視点から解決できる人材を養成します。【資料①】をご参照ください。
本プログラムでは、経営学の全領域にわたる科目を幅広くそろえる神戸大学に、新規事業化ならびに地域課題の解決に特化したプログラムを持つ小樽商科大学と和歌山大学が加わり、創造的かつ実践的な教育を提供します。さらに、地域/社会課題の解決に実績と強みを持つ企業や神戸市と連携して、地域/社会課題を取り上げたプロジェクト型の授業やインターンシップを行いながら多様なニーズを持つ学生に対して具体的に学ぶ機会を提供していきます。
BVCCプログラム実施大学と連携機関
本プログラムは、2024年4月(令和6年度)より神戸大学大学院経営学研究科の経営学専攻(一般大学院)と現代経営学専攻(専門職大学院:MBA)、小樽商科大学大学院商学研究科のアントレプレナーシップ専攻(専門職大学院:MBA)と現代商学専攻(一般大学院)、和歌山大学大学院観光学研究科(一般大学院)によって開始します。
事業連携機関として、日本全国に幅広い企業ネットワークを持つ株式会社三菱UFJ銀行、中小企業に強みを持つ株式会社日本M&Aセンター、人材育成事業に強みを持つ株式会社インソース、日本の典型的な地域課題を抱える神戸市が参加します。また連携大学(専攻)および連携機関は補助事業年度中に拡大させる方針です。
教育プログラム(BVCCプログラム)の内容
本プログラムは、対話型ビジネス価値共創人材の養成のために、①価値創発科目群、?社会実装科目群、③プロジェクト科目群の3つの科目群を設定し、【資料②】に示す科目を予定しています。
①価値創発科目群は、価値の源泉となる新たなアイデアをゼロから着想し育てるための価値創発基盤科目とアイデアを事業として成立させるための新規事業創造科目から構成されます。
価値創発基盤科目には、優れた起業家に共通する意思決定?思考プロセスとして注目される「エフェクチュエーション」、具体的な価値創発を多面的に学ぶ「価値創造の諸相」などの価値創発の手法に関する科目と、価値創発の基礎としての哲学?思想に関する「リベラルアーツ」、ビジネスの倫理と価値観に関する「経営倫理」、価値創発の基礎として役立つ「経営データ分析」が含まれます。これらの科目は主に神戸大学が提供します。なお、価値創発科目の提供については、神戸大学バリュースクールの協力も得る予定です。
新規事業創造科目には、小樽商科大学と神戸大学が提供する「アントレプレナーシップ」と「アントレプレナーファイナンス」に加えて、小樽商科大学が提供する新規事業創造領域の各論に相当する「ビジネスシミュレーション」、「ソーシャルビジネスと事業創造」、「グローバルマネジメント」、「戦略的CSR」が含まれます。このうち、小樽商科大学が提供する「ビジネスシミュレーション」は、事業化における資金調達から市場化までをシミュレーションゲームによって学ぶチーム型学習の科目です。
②社会実装科目群は、事業として価値を実現?実装し、考案された事業モデルを立ち上げて駆動させる事業モデル駆動科目と実際のビジネス課題の解決に資するビジネス課題解決科目から構成されます。
事業モデル駆動科目には、価値共創における創造的対話の考え方と具体的な実践手法について学ぶ科目を配置します。「リーダーシップ」、「対話型組織開発」、「問題解決能力の開発」は、対話を通して事業を進める方法や組織運営の方法を学ぶ一連の科目であり、「社会実装のための価値設計」では、その実践として具体的なケースを通してアイデアを社会実装する方法を学びます。なお併せて、事業モデルの理解を深めるためのプログラム外科目として、神戸大学では、経営学専攻(一般大学院)提供の基盤科目や現代経営学専攻(専門職大学院)提供のMBAコア科目、さらには英語教育プログラムKIMAPの科目も開講されており、その一部を小樽商科大学および和歌山大学のプログラム生にも履修可能とすることも検討しています。
ビジネス課題解決科目には、実際のビジネス価値創造を行った事例から学ぶ科目を配置し、他の科目で修得した知識/考え方と現実の地域/社会課題をより密接に接続します。これらの科目は、和歌山大学が提供する地域や観光に関する一連の科目「観光地域研究A」、「観光文化研究A」、「観光経営研究A」、「Tourism Management Research A」、「Tourism and Culture Research A」と、連携機関が提供する具体的な企業や地域/社会課題を扱った「ファミリービジネス」(株式会社三菱UFJ銀行)、「M&A戦略」(株式会社日本M&Aセンター)、「人的資本経営」(株式会社インソース)、「地域課題と経営」(神戸市)などが予定されています。
これらの科目(①価値創発科目群 ②社会実装科目群)では、実際の価値共創の難しさやプロセスの実例を通して、価値創発から社会実装までのプロセスとそこでの課題を理解するとともに利害関係者との協働の実際について学ぶことになります。連携企業科目は、それぞれのテーマの中で地域/社会課題を扱うように設計し、参画している神戸市は、豊かな自然環境や多彩な文化、多様な価値観が融合する大都市である一方、人口減少?少子高齢化の加速に伴い、まちづくり、環境、教育、防災などの分野で様々な地域課題を抱えており、これらの課題をテーマにした科目提供を予定しています。
この科目群は、連携企業?自治体を拡大することで、さらに充実させることが可能で、北海道下や和歌山県下の企業や自治体を含めて、本プログラムもその方向を目指しています。
③プロジェクト科目群は、ビジネス価値共創(Business Value Co-Creation:BVCC)に関するチーム型学習の科目群で、BVCC演習とBVCCインターンから構成されます。現実の地域/社会課題に取り組むために、価値創発、社会実装といった価値共創に関わる各段階の個別の知識?スキルを、個々ばらばらにではなく、創造的対話を実践して、課題解決のために総動員することを学びます。図1をご参照ください。
BVCC演習では、地域/社会課題を取り上げ、プロジェクトとして課題解決をチームで行う演習(PBL)を連携企業?自治体とともに協力しながら進めます。この演習は、神戸大学、小樽商科大学、和歌山大学の教員がチームを組んで指導にあたり、学生が、ビジネスパーソンやそれぞれの地域のステークホルダーと対話しながら、実際の課題解決にプロジェクトとして取り組みます。テーマの設定は、連携企業?自治体との共同研究の成果を活用し、プロジェクト演習の成果を研究に活かす双方向のスキームを確立します。
BVCC演習は、地域の観光課題をフィールドワークを通して解決していく「BVCC演習(観光経営)」、地域の企業や自治体の経営課題を解決していく「BVCC演習(地域経営)」、グローバルな社会課題に関わる「BVCC演習(グローバル経営)」3科目からスタートし、プログラムの進行に合わせて科目数を増加させる予定です。なお、「BVCC演習(グローバル経営)」は英語で提供する予定です。
これらの演習を通じて、参加学生は、それまで学習した創造的対話の手法を実践しながら、価値創発から社会実装までの一貫したプロセスをフィールドワークや利害関係者との対話を通して経験することで、創造的対話による価値共創を実践的な能力として身につけます。
BVCCインターン*は、科目履修で学んだ知識とスキルを実際に活用しながら学ぶことを目的とします。インターンの場の確保については、連携機関である株式会社三菱UFJ銀行、株式会社日本M&Aセンター、株式会社インソース、神戸市と協力し、協力機関の拡大を継続的に目指していきます。BVCCインターンでは、インターンシップの規模に応じて単位認定をし、アカデミアから実社会への知識とスキルのスムーズな移行を促進します。
* BVCCインターンについては2025年(令和7年)4月以降の実施を目指し、連携機関と協議中の内容を含みます。
本プログラムの修了要件
本プログラムの修了要件は、3カテゴリーごとに少なくとも1科目以上履修し、合計10単位以上を修得することです。教育プログラムの修了証は三大学共同で出す予定です。
推奨される履修モデルは、修士1年前期に経営基盤科目(プログラム外)と価値創発科目や社会実装科目(事業モデル駆動科目)を履修し、1年後期から2年前期にかけて社会実装科目(ビジネス課題解決科目)を学び、2年前期にBVCCインターン、後期にBVCC演習を履修して、最後に修士論文を作成するパターンです。
シンポジウム開催
2月21日(水)に、出光佐三記念六甲台講堂(神戸大学六甲台第一キャンパス、オンラインLIVE配信あり)にて、「地域/社会課題を解決する対話型ビジネス価値共創人材養成プログラム」キックオフシンポジウム―価値創造で地域/社会課題を解決するには―」を開催いたします。
本シンポジウムでは、盛山正仁文部科学大臣からのビデオメッセージ、藤澤正人神戸大学長の挨拶、國部克彦教授(神戸大学大学院経営学研究科長)から対話型ビジネス価値共創という新しい考え方と実践を説明し、実際に小樽や和歌山の地で地域課題を解決して価値共創を実践している企業に講演いただきます。続いて、本プログラムに参画いただく連携機関、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社日本M&Aセンター、株式会社インソース、神戸市の紹介を行い、最後に、神戸大学、小樽商科大学、和歌山大学のプログラム責任者が、各大学のプログラムの特徴を生かして、これからどのような新しい教育プログラムを創っていくかを議論します。
皆さまのご参加をお待ちしております。詳細は、下記の関連情報をご覧ください。
人文?社会科学系ネットワーク型大学院構築事業 関連情報
- 広報用資料
- 文部科学省
- 令和5年度採択
- 審査結果 (採択理由)
- 「地域/社会課題を解決する対話型ビジネス価値共創人材養成プログラム」キックオフシンポジウム―価値創造で地域/社会課題を解決するには (令和6年2月21日(水))
「人文?社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」は、「人文科学?社会科学系における 大学院教育改革の方向性」(中間とりまとめ)(令和4年8月3日 中央教育審議会大学分科会大学院部会)を踏まえ、ネットワーク型の教育研究を通じて社会の期待に応える、新たな人文科学?社会科学系の高度人材養成モデルの構築を支援するための事業です。
(経営学研究科 産学連携支援室)