2025年7月15日、神戸大学?尼崎信用金庫共同研究成果発表「共創するESG地域金融 - 信用金庫の連携による実践知の共有」が開催されました。

神戸大学経済経営研究所では、共同研究等を通じ、地方自治体、地域企業、地域金融機関、地域支援団体などとの連携を図るため、2023年4月、地域共創研究推進センターを設立しました。地域連携活動の拠点として地域の金融機関様や団体様との共同研究を強力に推進しております。

信用金庫をはじめとした地域金融機関は、取引先企業と日頃から密接な関係性を構築して、その事業性を深く理解し、幅広い支援を行っています。ただ、従来の事業性評価においては、必ずしも環境や社会の観点を取り込めていませんでした。しかし、近年、環境や社会の要因が企業経営の制約となるとともに、新しいビジネスチャンスにもなっています。そこで、こうした観点を含めたESG地域金融に取り組むことが求められています。

 作田誠司/尼崎信用金庫理事長
 柴田弘之/信金中央金庫理事長

当研究所と尼崎信用金庫は、2022年度より「ESG要素を考慮した事業性評価の深化を通じた地域における事業者支援体制構築の推進」に関する共同研究を実施してきました。また、尼崎信用金庫は、2022年度に引き続き、2023年度の環境省「地域におけるESG金融促進事業」に採択されており、 本年2月には、環境省主催「第6回ESGファイナンス?アワード?ジャパン」の間接金融部門において特別賞を受賞しました。

そこで、本シンポジウムでは、これらの共同研究を通して実施してきたESG 要素を考慮した事業性評価の取り組みを紹介し、今後の地域金融の在り方を考えることを目的とし、荒木千秋さん(大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンター特任講師?神戸大学経済経営研究所非常勤講師)による総合司会のもと、講演とパネルディスカッションに加え、今回はパネルディスカッションに参加した4金庫によるESG広域連携協定締結式も行いました。

作田誠司理事長(尼崎信用金庫)、柴田弘之理事長(信金中央金庫)による挨拶に続き、第1部では、家森信善教授(神戸大学経済経営研究所 教授?同地域共創研究推進センター長)が「ESG地域金融の展開と裾野拡大への課題-広域連携への期待-」と題し、続いて、平尾禎秀さん(環境省大臣官房 環境経済課長)が「ESG地域金融への期待」と題して基調講演を行いました。

家森信善/神戸大学経済経営研究所 教授、同地域共創研究推進センター長 
平尾禎秀/環境省大臣官房 環境経済課長 

次に、潮成之介さん(尼崎信用金庫 総合企画部長)が、「尼崎信用金庫のESG地域金融の推進と広域連携の取り組み」と題し報告を行いました。続いて、評価シートを活用した実践事例報告として、松下誠吾さん(株式会社フクユ 代表取締役)と福島將之さん(尼崎信用金庫 昆陽里支店長)による報告が行われました。報告では、ESG要素を考慮した3種類の事業性評価シート(選択式設問シート?ESG要素を考慮したローカルベンチマーク?ESG課題評価シート)を用いた実践により、ESGに関する客観的な視点を得るとともに、自社の課題や強みを俯瞰的に把握でき、取組の方向性が明確になり、尼崎信用金庫と長期的な目線で課題を共有でき、両者の信頼関係がより深まったことが報告されました。

 

左:潮成之介/尼崎信用金庫 総合企画部長 

中:福島將之/尼崎信用金庫 昆陽里支店長、松下誠吾/株式会社フクユ 代表取締役

右:井上公宏/尼崎信用金庫 価値創造事業部  部長  兼  法人ソリューショングループ長

引き続き、井上公宏さん(尼崎信用金庫  価値創造事業部  部長  兼  法人ソリューショングループ長)から、川崎信用金庫、浜松いわた信用金庫、福岡ひびき信用金庫および尼崎信用金庫の「4金庫によるESG広域連携協定について」説明があり、連携協定締結式が行われました。

左から:堤和也/川崎信用金庫理事長、髙栁裕久/浜松いわた信用金庫理事長、作田誠司/尼崎信用金庫理事長、井倉眞/福岡ひびき信用金庫理事長

続く第2部では、家森信善教授の司会により、「ESG地域金融の広域連携の経験と展開」をテーマにパネルディスカッションが行われました。井倉眞理事長(福岡ひびき信用金庫)、大塚琴美さん(信金中央金庫 サステナビリティ推進部長)作田誠司理事長(尼崎信用金庫)、髙栁裕久理事長(浜松いわた信用金庫)、竹ヶ原啓介さん(政策研究大学院大学 教授?神戸大学経済経営研究所客員教授)、堤和也理事長(川崎信用金庫)、平尾禎秀さん(環境省大臣官房 環境経済課長)がパネリストとして参加し、今回の共同研究の意義と今後期待される展開について議論が行われました。4金庫からは積極的に進めているESG取組の状況について報告が行われ、信金中央金庫が中心となり、全国の信用金庫を巻き込んだ「しんきんグリーンプロジェクト」を展開しているとの報告がありました。

また、ESGには多様性や包括性がキーワードになるため、個々の金融機関が単独で十分な支援を顧客に提供するのは難しく、様々な連携先との有効な関係を構築することが必要であるが、今回の4金庫広域連携協定により、各金庫間での情報共有が可能となり、SDG知見を備えた人材の育成等、ESG地域金融の推進に大変有意義であるとの意見がありました。

 

左から:家森信善教授、平尾禎秀/環境省大臣官房 環境経済課長、堤和也/川崎信用金庫理事長、髙栁裕久/浜松いわた信用金庫理事長、作田誠司/尼崎信用金庫理事長、井倉眞/福岡ひびき信用金庫理事長、竹ヶ原啓介/政策研究大学院大学 教授?神戸大学経済経営研究所客員教授、大塚琴美/信金中央金庫 サステナビリティ推進部長

最後に、西谷公孝経済経営研究所長から、御礼の挨拶がありました。

シンポジウムはハイブリッド形式で行われ、出光佐三六甲台講堂に直接来場いただいた150名、Zoomウェビナーで参加された230名、計380名もの企業?組織と個人の方に参加していただきました。

今回は、県や市などの行政機関、金融機関や一般企業などの様々な立場から多くのご参加をいただき、ESGの取組事例等大変参考になった、ESG地域金融の今後の社会および経済に与える影響の効果分析についても、是非講演を聞いてみたいなど、高い評価の声をいただきました。

今年度も共同研究を継続し、本取り組みの深化と一層の横展開を実現していく計画となっています。なお、本シンポジウムの内容は、神戸大学経済経営研究所の研究叢書として刊行される予定です。

 

 (経済経営研究所)