株式会社ユーグレナ (本社:東京都港区、社長:出雲充)、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の佐々木建吾客員准教授らは、共同研究により、微細藻類ユーグレナ (和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」) が、免疫バランスの調整や2型糖尿病の症状改善に寄与する可能性の注目される酪酸 (らくさん) を産生する腸内細菌 (以下「酪酸菌※1?」) に対して、腸内細菌叢 (さいきんそう)※2?における占有率および酪酸産生を増加させることを示唆する成果を確認しました。

本研究成果は、2021年1月13日にネイチャー?リサーチ社のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

研究の目的

ヒトの腸内には、100種類以上の腸内細菌が100兆個以上生息しており、腸内細菌の集団は腸内細菌叢と呼ばれています。腸内細菌は、腸内で相互にバランスを保ちながら腸内細菌叢を形成しており、そのバランスが、ヒトの健康と関連していることが近年明らかになってきました。疾病、老化、精神的?肉体的ストレス、環境の変化、食生活の変化などの原因により腸内細菌叢のバランスが崩れると、多様性が重視される腸内細菌叢の中で、特定の菌が増加することにより有害物質も増加し、さまざまな不調につながると言われています。このような腸内細菌叢の中で、身体に良好な影響を及ぼす細菌としては、乳酸菌やビフィズス菌が知られていますが、近年、酪酸菌の重要性にも注目が集まっています。中でも、Faecalibacterium prausnitzii (フィーカリバクテリウム?プラウスニッツイ、以下「フィーカリバクテリウム」) は、消化管内で最も豊富な酪酸菌の一つとして知られています。酪酸菌によって腸内で産生される酪酸は、免疫バランスの調整や、インスリン抵抗性の改善による2型糖尿病の症状改善に寄与する可能性が示されています。また、長寿の人の腸内に多く存在する可能性も研究されています。

株式会社ユーグレナは、健康の基盤を維持した上でより良い状態へ高めることで、持続可能な健康を実現することが大切だと考え、ユーグレナの摂取を通じてからだが本来持つ「つくる?はたらく?まもる」のサイクルを保ち、健康の基盤を妨げる複合的要因である「栄養不足」「心身の疲労」「免疫力低下」の連鎖を断ち切ることを目的として研究を進めています。腸内細菌叢のバランスの崩れは、栄養の吸収の低下や免疫力の低下にも影響することが分かっており、本研究では、ユーグレナの摂取がヒトの腸内細菌叢にどのように影響を及ぼすかを調べました。

研究の内容と結果

本研究では、ユーグレナのヒト腸内細菌叢およびその代謝物産生に及ぼす影響を、試験管内にヒト大腸環境を再現したモデル (以下「試験管内モデル」) を用いて評価するとともに、28名の男女がユーグレナを30日間継続摂取した際の腸内細菌叢の推移を検証しました。

ユーグレナが試験管内モデルでフィーカリバクテリウム占有率を上昇させ、酪酸産生も増加させた

健常者11名から得られた各糞便サンプルにユーグレナを添加し、試験管内で発酵を行いました。腸内細菌叢の解析の結果、ユーグレナの添加によりフィーカリバクテリウムの占有率が有意に上昇することが明らかになりました (図a)。また、発酵によって産生した代謝物を調べたところ、ユーグレナを添加して発酵させた場合、ユーグレナを添加せずに発酵させた場合と比較して、酪酸の産生が増加することが示されました (図b)。なお、フィーカリバクテリウムの増加や酪酸の産生増加はパラミロンの添加ではみられず、ユ