日本古典文学全集は一定の周期で編纂され、刊行されている。戦後だけでも、岩波書店『日本古典文学大系』『新日本古典文学大系』、小学館『日本古典文学全集』『新編日本古典文学全集』、新潮社『新潮日本古典集成』などがある。そういった中で、われわれははたして「古典」という名に値する文学作品を選び得ているだろうか。
古典とは、むろん大昔に書かれた物全般をいうのではない。同時代に受け入れられただけのものをいうのでもない。時代を越えて読み継がれ、それぞれの時代の価値観の中で読み替えられ、常に新たな外套をまとって我々の前に姿を現すものを「古典」というのである。古典には、時代や読者が変わっても、変わらず共感を与え続ける普遍性がある。
江戸文学といえば、庶民の文学であるというレッテルは、いまだに高校の教科書レベルでは固定化している。そして、小説?俳諧?演劇という三分類から、代表作者と作品を選び、これを特権化してきた。しかし、それは近代の眼から見てすくい上げやすいものを焦点化してきたのではなかったか? 以上のような問題意識から、従来の文学史や文学全集に飽き足りないものを感じる、中堅?若手研究者に呼びかけて、新たな観点から文学全集を編集するとすれば、いかなる作品を選ぶことが可能かという難題に答えてもらったのが本書である。以下、目次をもって紹介に代えさせていただく。
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